
近年のデジタル化に伴い、多くの企業が直面しているのがアプリケーション管理の問題です。その会社の業務にとって重要なアプリケーションの性能低下は売上の減少に直結します。例えば、とある会社のサイトの読み込みが非常に遅かったら、多くの人は別会社のサイトに移動しようとするでしょう。
そのようなことを防ぐために、重要なアプリケーションのパフォーマンスの監視をし、適切に管理を行うことは非常に大切なのです。
アプリケーション監視ツールの重要性
アプリケーション監視ツールは、膨大なデータを収集することで、発生したエラーやアプリケーションのパフォーマンスの低下などの情報を分析します。ユーザーが使用する前段階でこれらの情報を得ることで、直接悪影響を及ぼす前に問題を修正することができるのです。
また、アプリケーションの価値を保つためにユーザーの満足度を調査することも、監視ツールの重要な役割だと言えるでしょう。適切なアプリケーションの監視をするためには、収集したデータを効率的に供給することが大切です。
つまり、監視にあたってはデータを保存するシステムの性能が大きく関わってきます。データの取得性能を上げるためには、データへのアクセスの速さが重要なのです。そのために利用されるのが、データの容量よりも速度を優先する「キャッシュ」です。
キャッシュとは?メリットは何?

キャッシュとは、データのサブセット(一部分)が保存される高速のデータストレージレイヤーです。キャッシュ内のデータは高速でアクセスすることができるハードウェアに保存されます。一般的にデータベース内にあるデータというと耐久性があるものが多いですが、キャッシュに関しては速度を優先するため、データのサブセットは一時的に保存されるのみです。
キャッシュのメリットとして何より大きい点はパフォーマンスの向上です。通常のディスクよりも桁違いに高速なメモリにより、データへのアクセス・読み取りが非常に速く行われ、アプリケーションの全体的なパフォーマンスが向上する仕組みです。
また、データベースのコスト削減、パフォーマンスの負荷の軽減にも繋がります。
AWSのシステム『ElastCache』とは?Redisって?
今まで見てきたように、キャッシュストアサービスは非常に優秀です。AWS(Amazon Web Services)は世界で最も広く採用されているクラウドプラットフォームで、多くの企業や政府機関がAWSを使用してコスト削減やパフォーマンスの速度・精度を上げています。
そんなAWSが提供するキャッシュストアサービスが、『ElastCache』です。Redisとは、『ElastCache』で使用されているデータベースのことです。
Redisとは?その仕組みは?
Redisとはリモートディクショナリーサーバー(Remote Dictionary Server)の略で、高速のデータベースのことです。Redisの開発者は、イタリアのスタートアップ企業の利用者が増大したことから、企業がそれに適応できるようにRedisを開発しました。
現在ではRedisはゲームや医療、キャッシング等様々な分野で使用されており、1秒間に数百万件ほどのリクエストを処理することができるのです。
通常のデータベースは、データを保存する際にディスクやSSDを使用します。しかし、Redisのデータはメモリ内に保存されるため、ディスクにわざわざアクセスする必要がなく、マイクロ秒単位でデータにアクセスすることができるのです。
これによりアプリケーション構築がさらに容易になり、性能の向上へ繋がります。
Redisのメリットは?
Redisのメリットはデータへのアクセスの俊敏性だけではありません。通常、データストアではデータ構造が制限されることが多いですが、Redisには様々なデータ構造が用意されており、柔軟性に優れています。Redisのデータタイプには追加された順に並べられた文字列の集合である「Lists」、フィールドと値のデータリストを保存する構造である「Hashes」、ビットレベルの演算を実行できるデータタイプの「Bitmaps」など、全部で7種類ものタイプがあり、利用者のニーズに応えています。
さらに、Redisではアプリケーションでデータを管理する際のコードをシンプルなものにできます。コードがシンプルであれば、開発者への負担も大幅に減らすことができます。使用できる言語もJava、Python、Rubyなどその他多数の言語があり、「とにかく開発者にとって利用しやすいデータベース」となっていることが分かるでしょう。
Redisの監視機能
Redis監視機能により、メモリの使用率やユーザーの接続の統計情報、キースペースの統計情報など、アプリケーションのパフォーマンスに関わる重要な統計データ、データの持続性、その他詳細情報を得ることができます。
Redisは処理速度の速さゆえに、とにかく大量のデータを扱います。Redisはそれらの膨大なデータを複数のインスタンスに分割し、アプリケーションのパフォーマンスの向上を図っています。インスタンスとは、コンピュータプログラムやデータ構造などを、メインメモリ上に展開して処理・実行することができる状態にしたものを指します。
これにより、Redisではどのようなリソースに対してもメモリの負荷を軽減することができるのです。
また、Redisは同じく処理速度が速いために、他データベースと比べても非常に多くのメモリを使います。
そのため、メモリ使用率を監視することが不可欠なのです。使用率が高まり、メモリの容量が少なくなると、必然的にアプリケーションのパフォーマンスは低下します。Redisではサーバーのメモリ消費を監視・管理することで、多くのメモリを使うにもかかわらず、パフォーマンスの低下も防ぐことができています。
Memcachedとの比較
このようにRedisには様々な利点がありますが、他のデータベースと比較してどのような良さを持つのでしょうか?冒頭で紹介したAWSの『ElastCache』ではRedisに加えMemcachedというサービスも提供されているため、今回はこのデータベースとの比較を行います。
RedisとMemcachedはどちらもデータがメモリ内に保存されるインメモリのオープンソースデータストアです。
そのため、どちらも俊敏性には自信があるデータベースとなっています。また、共に使用可能な言語の種類の多さや、コードが少なくて良いというメリットを持ちます。
しかし、Memcachedに比べてRedisはより複雑な構造を持ち、様々なニーズに対応できるのです。Redisでは、メインのノード(『ElastCache』における最小単位)に問題が生じても、複数のレプリカを作成することができ、データベースの読み取りを拡張します。
また、高性能なチャットルームやソーシャルメディアフィードといった現代で必要となる様々なパターンマッチングを備えたメッセージングをサポートすることもできます。このように、比較的シンプルなMemcachedと比べ、Redisのサポートの手厚さは驚くべきものです。
高速データベース「Redis」を使ってみよう!
AWSのキャッシュストアサービス『ElastCache』でも利用されるRedis。多様なユースケースに対応できるこのデータベースは、「アプリケーションの性能を向上させたい!」と考えている方には必見でしょう。
また、Redisの最新バージョン「Redis 5.0.3」は新しいデータ構造が導入されており、日々改良を重ねているデータベースは信頼性も高いと考えられます。アプリケーションの監視に悩んでいる方は、ぜひ一度検討されてみてはいかがでしょうか。